こんにちは^^秋山です。

2月中旬になってまた一段と寒くなりましたね。
北風が強いときはネックウォーマーを首にして庭工事をすると暖かく、手放すことができなくなりました。

そして会社の所在地の埼玉県川口市安行にも雪が降りました。[図1][図2]
この様な日は会社で機材の整備や見積もりなどの事務仕事が捗ります。

さて、前回までは京都で活躍された庭師を紹介させていただきましたが、今回は関東で活躍された庭師・二代目松本幾次郎・松本亀吉について紹介させていただきます。
[図1] 会社前枯山水 降雪前 筆者撮影2023/02/10
[図2] 会社前枯山水 降雪後 筆者撮影2023/02/10
〈二代目松本幾次郎、松本亀吉〉
参考文献:『庭 NIWA』245号、株式会社建築資料研究所、2021年、46~47頁

二代目松本幾次郎(1858~1936)は、明治~昭和時代にかけて東京を中心に活躍しました庭師です。[図3]

1858年江戸下根岸に長男として生まれ、明治17年26歳の時に初代から家督を継ぎ庭づくりに従事しました。

現在判明している作品には明治期に完成をみる渋沢栄一の「曖依村荘」、成田山新勝寺の成田山公園(部分)、山内公爵家代々木別邸庭園などがあります。

また、昭和に「雑木の庭」の作風で活躍した飯田十基(1890~1977)が弟子入りをしたことで知られています。


松本亀吉(1877~1925)は、初代松本幾次郎の三男として、明治10年(1877)に江戸下根岸に生まれ、大正元年(1912)35歳の時に分家し独立して庭づくりに従事しました。[図4]

現在判明している作品には中村歌右衛門邸、高橋箒庵邸、渋谷の津村重舎邸、水戸徳川家向島屋敷茶庭などがあります。

いずれの作品も、関東大震災と太平洋戦争の被害、所有者の変更や開発などの事情で、完全な形では現存するものはありません。


そのような中、「現存する庭は新潟の旧齋藤氏別邸庭園があり、二代目松本幾次郎・亀吉が作庭に関わったことが分かっている。」
1) という事もあり、この旧齋藤氏別邸庭園は幾次郎・亀吉の技術や審美眼を現在でも目にすることができる貴重な庭園といえるかもしれません。



庭園は時間と共に変化しますが、自然災害や人の都合によって大きく変化もしくは無くなってしまうのは非常に惜しいと感じるのは造園業に従事しているからでしょうか。

そう考えると、安行庭苑で庭工事を行った際には、記録や記憶に残していきたいと思いました。

次に、二代目松本幾次郎・亀吉が関わった庭として現存している旧齋藤氏別邸庭園について紹介させていただきたいと思います
[図3] 二代目松本幾次郎 引用『庭NIWA』245号
[図4] 松本亀吉 引用『庭NIWA』245号
〈旧齋藤家別邸庭園〉
参考文献:『季節の風につつまれて 旧齋藤家別邸』新潟市旧齋藤家別邸、2015年

旧齋藤家別邸[図5 旧齋藤氏別邸 引用『季節の風につつまれて 旧齋藤家別邸』]は、北前船経営で財を成した湊町新潟の豪商・四代目齋藤喜十郎が大正時代に造営した別荘です。

"庭屋一如"(ていおくいちにょ)という庭園と建物を一体ととらえる趣向で作られた開放的な建築を中心に、砂丘の高低差を生かした池泉回遊式庭園が広がっています。

砂丘の傾斜面に広がる松林と、随所に楓を配植して自然風の林が広がっています。[図6]

大滝の周辺や庭園の随所に阿賀野川の上流域で採掘される石材や、主屋縁先の水道水を導いて湧水を形造った蹲踞に鮮やかな色彩の"佐渡赤玉石"[図7]を据えるなど地域に固有の石材を多用している点が注目されています。

大正から昭和へ、新潟を代表する迎賓の場として政財界をはじめ多くの著名人が招かれました。

そして市民による保存運動を経て公有化されて、地域の文化資源として多くの人々に親しまれ活用されています。

2013年に国指定の登録記念物として登録されて、その2年後2015年に国指定の名勝として登録されました。
[図6] 旧齋藤氏別邸庭園 引用『庭NIWA』245号
[図7] 主屋 蹲踞 引用『庭NIWA』245号
参考にさせていただいた社長が所有している写真集の『季節の風につつまれて 旧齋藤家別邸』には四季折々の鮮やかな庭園の写真が掲載されています。[図8]

その中で青々としている松と楓の林を借景に見る庭園を、実際に見てみたいと思いました。[図9]

ぜひ社長に許可をいただき、旧齋藤氏別邸庭園を直接この目で見に行きたいです。

そして作庭に関わった二代目松本幾次郎・松本亀吉の技術と技能によってつくられた庭園を見て、どのような意匠をこらしてつくられたのか思いを馳せることができるように庭園知識を深めていきたい。

しかし、今回、資料を元にブログを作成しましたが、実際に現地で見聞きしていないので、資料に記述されている情景が想像できないというもどかしさを感じざるを得ません。
いずれ自分が現地に赴き、作庭する時の糧になる様、準備していきたいです。


最後に、弊社の小林は二代目松本幾次郎の弟子の飯田十基に弟子入りした、小形研三が設立した「京央造園設計事務所」に務めていたという経緯もあり、安行庭苑の一員としても、ご縁があるのではないかと考えずにはいられません。

私もこのご縁を信じて、そして大事にし、日々精進していきたいです。

安行庭苑 秋山

参考文献
『庭 NIWA』245号、株式会社建築資料研究所、2021年、46~47頁
『季節の風につつまれて 旧齋藤家別邸』新潟市旧齋藤家別邸、2015年
文化庁データベース「旧齋藤氏別邸庭園」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/searchlist(2023年2月17日筆者閲覧)

引用文献
註1)『庭 NIWA』245号、株式会社建築資料研究所、2021年、46~47頁
[図8] 旧齋藤氏別邸冬景色 
          引用『季節の風につつまれて 旧齋藤家別邸』
[図9] 旧齋藤氏別邸夏景色 
           引用『季節の風につつまれて 旧齋藤家別邸』