こんにちは、秋山です^^

2月が終わり、3月が始まりました。

管理工事で行くお客様のお庭ではツバキの花が見頃を迎えようとしています。

以前ブログでお話しさせていただいた埼玉県 花と緑の振興センターでは460品種1150本ものツバキとサザンカが園内に植栽されています。

江戸時代からツバキの栽培が盛んであった”安行”ならではの品種の多さですね。

また足を運んでみたいです。

さて今回は私が好きな盆栽についてのブログです。


[図1八重ツバキ(チリメン) 筆者撮影2023/03/04 ]
今回のブログは、改めて自分の中で盆栽が、どのような価値観や位置づけなのかを再確認することが目的です。

方法としましてはこの場を借りて、盆栽に対する考え方を変えてくれた書物を紹介させていただきたいとおもいます。




私が盆栽を始めて2年目の時にご近所の方からこんな本を頂きました。[図2]

この本は亡くなった盆栽好きのおじい様の書物で、”処分してしまうから貰ってくれませんか”とお声をいただきお預かりした、1974年に(社)日本盆栽協会から発行された一冊です。

松平家の小品盆栽

高松城の藩主松平家の12代目 松平頼寿氏(1874~1944)と、水戸徳川家11代目、徳川昭武(1853~1910)の長女 徳川昭子の松平夫妻[図3]が大事に育てた小さな盆栽、いわゆる”小品盆栽”の写真集です。


「絵画も彫刻も、名品となれば作品も人の名も後世に伝え残されるが盆栽については、たとえ何百年のいのちを全うした名品であっても、これまで歴史的記録のほとんどないのが実情であった」
1)

と序文で説明されていることから盆栽業界の中で貴重な書物の一つだと思います。


松平家の小品盆栽は、日本盆栽教会で二大事業として長年開催している国風展 名品展をはじめ、盆栽の名品が集まるところには、必ず席を飾って話題を呼んでいたそうです。

その魅力は「松平家の小品からはあたりを払う格式の高さのようなものを感じさせる」
1)

と記されています。
[図2] 本の表紙 引用元:松平家に生きる珠玉の名品 小品盆栽
[図3] 松平頼寿夫妻 
引用元 松平家に生きる珠玉の名品 小品盆栽
[図4] 五葉松 13cm 樹齢70年
引用元:松平家に生きる珠玉の名品 小品盆栽
[図4] いたやかえで 6cm 樹齢60年
引用元:松平家に生きる珠玉の名品 小品盆栽
[図6] ばら 8cm 樹齢55年
引用元:松平家に生きる珠玉の名品 小品盆栽
[図7] さんざし 12cm 樹齢85年
引用元:松平家に生きる珠玉の名品 小品盆栽
松平家に見る盆栽の一つの特徴は、戦後(1945)その数を変えず、さらに中身も変わらないことです。

それは昭和19年(1944)、頼寿氏が当時の貴族院議長として在職中に逝去され、盆栽は昭子夫人の手に受け継がれたからだと考えられます。

夫人は「むかし、主人のおりましたころは一緒に盆栽の手入れをいたしましても、主人任せのせいか関心が薄うございましてね。いまは私が放っておくと枯れてしまいますもの、ほんとに目が離せない感じで・・・・。枯らさないことだけを考えております。」
2)

と語られている様に、頼寿氏の遺愛の盆栽を大事にされていました。

一つの盆栽[図4]は軽井沢の別荘で頼寿氏と過ごしていた時に、岩の隙間に生えていたものであったり、

ある盆栽[図5]は、塩原温泉(栃木県)に遊びに行った時に、崖に自生していたものである。

そういった頼寿氏との思い出の”記録”が盆栽に詰まっているのです。


私が盆栽を始めた当初は、ただ欲しいものや珍しいものを購入し並べて満足していましたが、今では盆栽を見ているといずれこの盆栽をどのようにしていくのか行く末を考えながら日々の水やりをする様になりました。

私の盆栽の一部は今、会社に置かせていただいています。

それはいずれ安行庭苑のお客様に何かの折に、贈らせていただけたらという考えで育てています。

その様な優しい気持ちで、日々の剪定管理の仕事や庭工事に従事していきたいと思います。

日々精進です。

安行庭苑 秋山 


参考文献
『松平家に生きる珠玉の名品 小品盆栽』社団法人 日本盆栽協会、1974年

引用文献

註1)『松平家に生きる珠玉の名品 小品盆栽』社団法人 日本盆栽協会、1974年、192頁
註2) 同註1)186頁